夢の女:3

お互いがどの様な境遇の、どの様な存在か大まかに掴めてからは、夢の逢瀬は現実の延長となった。
その日の生活を終えてミナと逢って歓談し、眠りに就く。それは極普通の生活の一部であり、ミナとの逢瀬リューグハルトに取って掛け替えの無い、大切なひと時になって行った。

リューグハルトをしている自分にどの段階で気付いたのだろうか。
おそらくその境目は誰にも判らないのだろう。気付いた時には既にと云う名の穴に落ち込んでいる。
しかし繊細な部分を多量に心奥に蔵しているこの不器用な男は、自分ミナに対する気持ちが変質した事には気付かず、ただ彼女に逢えない昼の時間に、彼女を想って切ない胸の痛みを覚え続けた。

想いは 高まる。
どちらからともなく、昼の世界での出逢いを求める事になる。
昼の世界での出逢い
その言葉には甘美な響きが篭っていた。
そしてそれは、逢瀬を現実と捉えている二人にとって当然実現されるべき、予定の出来事となった。

リューグハルトは、僧兵になろうと思った。
僧兵の操る念術、殊に傷や疲労を癒す救命詠唱は欲した。
周囲の者は一様にの転身を訝しみ、また引き止めもした。しかしの決意は固かった。
は、での交流でミナが烈火のような攻めを身上とする女戦士であると理解していた。
補助をする者の存在が彼女の活躍には必須であると、は判断したのだ。
僧院の出家を快く思った訳ではない。が、結局真摯な懇願に折れた。は敬虔な新人学僧が舌を巻く程の熱心さで念法詠唱の習得に取り組んだ。ミナと同質の、力押しの攻めで名を馳せた戦士は、一心に学問に没頭し、精神修養に努めた。同門の、よりもすっと年少の学僧達は、その不器用な邁進に呆れもし、好感を抱きもした。
は幾種かの救命詠唱を物にするや否や、僧院を後にした。教授方の高僧の中退を惜しんだが、の心は変わらなかった。
リューグハルトの留守を守っていた自警団の副長は、が故郷を後にすると聞いて呆然とした。リューグハルトを中心に成立し、を慕う者で大きくなった組織なのだ。しかし、落胆は有っても、そして動機に不審は有っても、リューグハルトの性質を知っている団員達は最終的にはの脱退を受け容れた。ただし、必ず帰還する事、それまで団長の席は空けて待っている事をリューグハルトに無理やり承知させた。それが譲れぬ条件だと団員達は主張した。リューグハルトは泣いた。そしてその条件を飲んだ。

リューグハルトはそうして、故郷を後にしたのだ。


ジグールは他人のの話をこれほど長々と聴いた経験は無かった。他人の夢を聴く程詰まらぬ事は無い、と云う一般的な認識に疑いを持った事は無かった。
しかし、この非日常的な夢物語ジグールには否定出来なかった。
に見たと逢うべく、この大男ははるばると旅をして来た。の中で落ち合う場所の変更を報され、今極めて危険な場所へ、まるで春の野に行楽に出掛けるような風情で向っている。
リューグハルトの語る夢物語を鼻で嗤うのは容易かったが、ジグールリューグハルトの言う夢の女トルゴイに実際に居るのか否かがやけに気になった。居て欲しいと言う気持ちが拭い難く心に宿っているのを、我ながら不思議だとも思った。
眼の前の価値有る物品なら判る。有るか無しか判らぬ不確かなの様なものを、人は命懸けで護ろうと思えるものなのか、と思った。
まだ手に入れぬ財宝を欲する、と云うのとは少し意味合いが違う気がした。
まだ見ぬものに命を懸ける。
僅かながら、その語句に震える様な甘美さを感じる自分を認めて、ジグールは戸惑いを覚えた。

リューグハルトの、巨躯に似合わぬ澄んだ瞳の色が、そう思わせるのだろうか、とジグールは思った。

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posted by リューグハルト at 2006年04月15日14:25 | Comment(3) | TrackBack(0) | 外伝

夢の女:2

金色の草原が、揺れていた。
風は温かく柔らかかった。
その草原に立つ人影は、傾いた陽光で縁取られ輝いていた。
リューグハルトは歩み寄って行く。
若い娘だった。未だかつて逢った事の無いだった。
長い髪が風に靡いて舞っている。意志の強そうな眉は凛々しく、悪戯な少女を思わせる大きな黒い瞳が愛苦しく、また回転の良さそうな輝きに満ちていた。口元は無邪気に笑みを浮かべ、それで居て肉感的なふくよかさを兼ね備えていた。
リューグハルトは胸に痛みを伴った陶酔を感じた。
長い間、彼女を見詰め続けた。
彼女もまた、リューグハルトを見詰めていた。近寄るに気付いたその娘は、少し驚いたような表情を見せたが、それはすぐに強い好奇心に取って代わった。彼女リューグハルトの頭から爪先までをくるくると良く動く双眸で観察していた。彼女の纏う薄衣が風に大きく揺らめいている。ただ立ち尽くしてお互いを見ている男女であったが、リューグハルトの胸の切なさは甘く高鳴り、であるにも関わらず自分の鼓動、呼吸までが感じられた。それは極めて歓びに満ちた時間だったのだ。
、ではない。
脈絡も無くリューグハルトはそう思った。


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「そう、夢だ。」

の話になって、微かに訝しむジグールに、リューグハルトは答えた。
「夢なんだ。だが、そう、普通の夢じゃなかった。」

これは体験なのだ。自分の記憶の中の出来事の一つに違いない。
そういう想いが、この無骨な僧形の戦士の中の繊細な部分に湧き上がっているらしい。
時を置いて顧みた時に実際の記憶としか思えない痕跡。
それは体験と何ら変わらない実在の色合いを帯びていたのだ
、と言うような意味合いの事をリューグハルトなりの簡素な言葉で表現した。

は繰り返し見る様になった。
最初は何日か置きだったも、暫くすると毎日見る様になった。昼時の転寝の中でも姿を見るようになった。
彼女との距離は縮まり、やがて手を伸ばせば触れられる距離にまで近寄った。しかし手を伸ばそうとは、思わなかった。
リューグハルトは自分の名前を名乗った。
も名乗った。
ミナ、と云う名前だった。
ミナリューグハルトの事を知りたがった。様々な質問をされた。
リューグハルトもまた、彼女の事を知りたいと思った。知りたいと思うあらゆる事を訊き、また尋ねられればどんな事であっても教える事が出来た。
知りたく思うのと等しい量の自分を知って欲しかった。そう云う気分に自然となっている。
二人の交流は何週間にも及んだ。

ミナは西域の大きな宿場に住んでいると云う事だった。
父親は宿場を護る守備隊の隊長であったらしい。西方の匪賊との戦闘で命を落とした。母親以外の男と余生を送る気は全く無く、独り身を通してミナを育てた。
ミナや幼い達を護りたいと思った。
の代わりにならねばならないと思った。
守備隊の武技師範の親友であった。
この武芸者長柄の扱いを仕込まれた。
仕込まれたというよりも、無理を云って、教わった。
師範は友人の遺児が戦闘に携わる事を良しと思っていなかったのだが、ミナは懇願して教授する事を約束させたのだ。
元来運動神経に優れたミナは、師範が思わず気を入れて教えたくなるほどに上達した。
父親を慕う隊員の多い守備隊にミナが入隊するのはごく自然な流れだった。果敢な攻めと俊敏な戦いぶりは同僚の中でも群を抜き、やがて守備隊の中でも三本の指に入る腕利きと目されるようになる。
誰が言うとも無く“強襲のミナ”と呼ばれる女戦士になっていた。その闘い振りが、やはり勇猛果敢であった父親を彷彿させる、と云う者もあった。
ミナは自分の長柄武器の上達に満足して居たし、また日を追って積み重ねられて行く技術の蓄積に手応えを感じても居た。そして何より、武芸に喜びを感じていた。

そんな頃に、を見たのだ。現実と変わらない、不思議なを。

ミナは、黄金の草原で大きな男の姿を見た瞬間に、胸が熱くなった。ときめきと云う感覚だった。頬が火照るのを感じた。その人影が、毎日のの中で接近して来る。そのくっきりとした顔の造作は直截に熱い血を感じさせる。そして力の有る少年の瞳。ミナは、日に日にときめきが高まって来るのが判った。胸が苦しかった。昼が切なかった。

ミナはその性情通り、ただ真っ直ぐに、をしたのだった。


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posted by リューグハルト at 2006年04月13日02:27 | Comment(1) | TrackBack(0) | 外伝

夢の女:1

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「夢?」
ジグールは、そう訊き返した。

古都を出立して既に二日経っている。

リューグハルトジグール、そしてトルゴイの少年チポルは、街道から少し外れて、野宿の準備を済ませた所だった。チポル夕食が待ち切れない様子だった。午後、夕食の為にと、ジグール飛礫を用いて草原雷鳥を二羽、仕留めて居たのだ。良く肥えた立派な雷鳥で、チポルは進んでその獲物を運びたがった。
リューグハルトの荷物の中には、干し肉団子が入っていた。これは香辛料調味料に漬け込んで干した牛の肉を細かく挽いて薬味獣脂と共に練った団子で、日持ちも良く、また鍋に投じて水で崩して煮れば風味豊かな肉の汁物にもなる、携行食としては打って付けのものだった。雷鳥は塩を振って焼き、干し肉団子にする事になった。脂の乗った鳥肉の焦げる臭いと、香辛料の効いたの臭いとで、チポルは思わず喉を鳴らさずには居られなかった。
ジグールは食後の濃く淹れたスウ茶を湯飲みに注ぐと、倒木の脇に敷いた毛布の所に持って行き、ゆったりと片膝をついた。
リューグハルトは黙って焚き火の焔の揺らめきを見詰めていた。ジグールは他者との交流を求める性質ではなかったが、リューグハルトに訊きたい事は沢山有った。そして交流の上手い下手を問わず、今は話し掛ける絶好の機会に違いないと思えた。何故、少年の訴えに応える気になったのか。ジグールは無駄な言葉を一欠けらも交えずに訊いた。
「俺は、」と静かな調子でリューグハルトが口を開いた。
トルゴイに行く心算で、古都を発って旅して来たのだ、と云う。に逢う為であると。
元々行く心算の場所だったのか。ジグールには少し意外な気もした。知り合いが居て、その場所が危険な状況に陥って居る。助けに行くのも当然な気がする。そんな簡単な事だったのか。それならジグールにも理解は出来る。いや、しかしそれでは納得が行かない。誰も振り返ろうとしなかったチポルの訴えに、野原へ苺摘みにでも出掛けるような笑顔で応えたリューグハルトに感じた「何か」は、それでは説明がつかない。
「親類でも居るのか?」と、ジグールは訊いた。
「いや、親戚も友人も居ない。初めての土地だ。」
遠くに視線を移してリューグハルトは言った。ジグールはその眼差しに何か愛おしさの様な色合いを感じ取った。
「古都で出逢う筈の女が、トルゴイに旅立ったらしくてな。」
女か、とジグールは思った。しかし何だか腑に落ちない。そのジグールの戸惑いを表情から読み取ったのか、どうか。リューグハルトは静かに話し始めた。

リューグハルト東部辺境の中規模の城塞都市で生真面目な聖職者のと貞淑で明るいとの間に産まれた。
いつでも正論を語り、そして裏の無い信念の人であったに反発が有った。
両親に似ぬ恵まれた体格に育ったリューグハルトはやがて戦士としての道を選ぶのだが、それは父親と違う土俵に立ちたかったのかもしれない。
故郷に徘徊する野獣と闘い、それが同時に近隣集落の人々の助けになると知り、生き甲斐を見出す事になる。戦闘は、個人技のレベルで或る意味擬似的な芸術と言えなくも無い。自己表現の欲求は、見事に害獣を倒す事で得られる。そしてそれは人々の感謝と云う形で手応えになる。
は都市外郭の住民に取っては「勇者」と呼べる存在だった。
自然、を慕って若者が集まり、私設自警団の様な集団が生まれた。私設自警団と城塞都市の正規の守備隊とは深刻な対立も無く、良好な関係を保つ事が出来た。守備隊遊撃部隊とでも言うような役割をリューグハルト達が受け持つ形に、自然に収まったからだ。都市の治安委員との煩わしい手続きで守備隊が動けない時等は守備隊々長から内々にリューグハルトの出動が依頼される事も有った。
リューグハルトが生まれ故郷に確固たる位置を築き始めた、そんな或る日の夜。
それは都市の南方の海岸近くの峡谷に棲みついた大蟹を討伐し、心地良く寝床に横たわった、その睡眠の最中の事であった。


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posted by リューグハルト at 2006年04月09日01:59 | Comment(3) | TrackBack(0) | 外伝

屍鬼:4

滲み込む様に五人の姿が廃屋に消える。

全員がその成り行きを見守っていたが、フヘドはふっと、暗さを増す草原に視線を移した。
つい今しがた人影草の絡み合う影かと判じかねたものが、今やはっきりと人の形であるのが判った。
フヘド隊長に報せるべく口を開きかけたが、口の中が乾き切っているのに気付いた。隊長、と声に出した心算が、何かしわがれた呻きの様な音でしかなかった事にフヘドは動揺した。フヘドの視線が背後の草原に戻ろうとした時、先程とは違う地点で何かに引っ掛かった。
黒い人影だ。背後の人影よりも近かった。
フヘドの混乱した視線が四方を泳いだ。囲まれている。フヘドは頭にカッと血が昇るのを感じた。あれ避難した住民じゃない。あれは、揺れている。揺れながら近付いて来る。歩くのが酷くヘタクソに見える。
枯れた声で隊長を呼んだ。自分の声には聴こえなかった。
隊長が、訝しそうにフヘドを振り向く。何事か?と云う表情に変化した時、絶叫が聴こえた。
そして悲鳴が続く。何度も。
隊長のした方を見遣る。
暗い、影絵の様な廃屋を。
二、三人がまろび出て来る。つんのめり、腰が砕け、彼らは仲間の所に逃げ帰って来た。兜の外れた者、右半身にべっとりと血糊の飛沫いた者、皆一様に蒼白に引き攣った顔になっている。
「隊長、死人が…。」
死人が襲って来た、と切れ切れに訴える。
二人、やられた。隊長は硬い表情で、それを聴いていた。嘘や勘違いではなさそうだった。
「隊長!」
フヘドは叫んだ。
「隊長、囲まれてます!あれは、あれは…c。」
隊長が素早く周囲を見廻す。隊員達もてんでに四方に視線を泳がせる。
暗闇から人型の影が染み出して来ていた。
完全に包囲されている事は、フヘドならずとも容易に判断出来た。

その内の一体が、焚き火に照らされた範囲に姿を現した。
死んでいる者だった。衣服は綻びている。いや肉体も綻びている。腹が抜けて、腸が垂れ下がっている。眼は白濁し、口は緊張感を失ってだらしなく開いている。口を開けていると言うよりは、顎が垂れ下がった様に見えた。そして、腐臭が一気に鼻腔を満たす。
野晒しの犬の死骸の臭いだ。生ゴミを埋める穴の臭いだ。
そこにゆらゆらと歩み出たのは、正しくであった。
団員達は正確な判断力を失った。
先輩団員の中で最も線の細いタヒアは棒立ちのまま凍りついていた。そのタヒアの横合いから両手を前に突き出した死人が掴み掛かった。ひゅっと乾いた音がタヒアの口から漏れた。悲鳴だったに違いない。死人タヒアの頬から上唇にかけてを喰いちぎった。
巡回部隊の両雄であるヘルツィフホルスは反応が早かった。それぞれが得意の武器を構えて死人に攻撃を仕掛けた。
ヘルツィフは隊支給の直刀ではなく、大きく湾曲した細身の剣だった。死人に袈裟懸けに斬り付け、さらに腹部に突きを入れる。しかし、生命感の無い、ズタ袋の様な手応えにヘルツィフは怯んだ表情を見せた。ヘルツィフの右肩が横合いから接近して来ていた死人に掴れた。一閃、その腕を斬り飛ばしたヘルツィフに今度は正面から最初の死人が掴み掛かる。を握った拳でその顔を殴り付けるヘルツィフに片腕の無い死人が再び掴み掛かる。さらにもう一体が。数体の死人の黒い影に剣士の姿が紛れて行く。
ホルスは最初の一突きが死人に効力の無いのを知るや、後はを振り回して打撃を加える事に専念した。ホルスの太いの柄が風を切って鈍い音が続く。
少なくとも歩く死者の群れに対して、某かの攻撃行動を取ったのはヘルツィフホルスだけだったようにフヘドには思えた。他の隊員はただただ怯え、或いは呆然として、死人に襲われていた。

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隊長はおそらく巡回部隊の中では最も冷静であったと思われる。
廃屋から逃げ帰った隊員に、何事かを確認している様だったが、知りたい情報を得るや、廃屋に逃げ込む様命令を発した。何人かはその声を聴いて廃屋に走った。
フヘド廃屋が安全に思われて、駆け出そうとした。
瞬間、腐臭が一際強く鼻腔を衝いた。
死人が視界の中に唐突に入って来た。数歩の距離である。武器は効かないと思った。背後に死人の発する複数の足音が有った。
は、素早く屈むと焚き火に手を伸ばして、火の点いた薪を手に取るや、これを振り回した。表情の無い死人が僅かにたじろいだ様に見えた。
フヘド廃屋に向おうとして、凍りついた。隊員達を追って、死人の群れフヘド廃屋の間を塞ぎつつある。

彼は取り残された。

胴震いがした。

風に靡いた薪の炎がはためく様な音を立てた。


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posted by リューグハルト at 2006年03月13日19:42 | Comment(7) | TrackBack(0) | 外伝

屍鬼:3

陽射しの傾きつつある屋外と比較しても、屋内の陰惨な暗さは格別だった。

一歩踏み込んだ時点で、嫌な気分が凝縮されて来る。
これは、臭いだ。この臭いが胸を悪くさせているのだ、と気付いた。
どこで嗅いだ臭いだったろう。
太った中年のオヤジの顔がちらつく。あれは、ガハイだ。
陰険で体型に似合わぬ高い声が変に耳障りな…。肉屋ガハイ
何でガハイの顔なんかを思い出すんだろうと思った瞬間、
フヘドヘルツィフの背中に顔をぶつけた。
ヘルツィフの硬い背中を感じた途端に、どじな自分の姿を自覚して、
羞恥心が一気に膨れ上がる。
何か軽く自然に自分の失態を詫びなければと、後ずさる。
眼の前にヘルツィフが棒の様に突っ立っている。
足元に、赤黒い水溜りが見えた。
ガハイの前掛けの汚れみたいだ。
身体をずらして室内の様子が判った。
血の海だった。思わず胃液が込み上げる。
酷い荒れ様で、しかも床板がガタガタだった。
大きく波打って、ばら撒いた様に乱れて居る。
そして、その上から、赤褐色の塗料がぶちまけられていた。
人は居ない。
人であった物がそこここに転がっていた。
フヘドの眼が、人の足首に吸い寄せられた。足首だけを見るのは初めてだった。
他の部分の無い足首は、忌まわしいものだった。切り口に覗いた骨がやけに白い。
手の指も数本散らばっている。どの部分か判らない、肉片も散らばっていた。
フヘドは堪らず家外に走り出た。家を囲む貧弱な柵に走り寄って吐いた。

涙が止まらなかった。

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眼の前の焚き火を、フヘドはじっと見詰めていた。
火にかけられた鍋で何かがグツグツ煮えていたが、食欲は起こらない。
むかつきだけが彼の胃を鷲掴みにしている。
周囲の風景は既に一日を終えようと、闇の色を濃くしている。依然として風が強い。

フヘドは自分も草の様に風に嬲られている気がしていた。耳を掠める風の音が、寄る辺無い心細さを増幅させている。
あれは一体どういう事なのだろう。あんな襲い方をするが居ただろうか。人を襲うは存在する。しかし、山犬獲物を骨ごと噛み砕いたりはしない。だろうか。トルゴイ草原で見た等と言う話は聴いた事が無い。いや、聴いた事の無い事態が起こったのだ。襲撃者聴いた事の無い存在に違いない。あの農家の住人は六人との事だったが、一人も発見されなかった。老爺にその息子夫婦、子供が3人・・・全員喰われたのか…。

団員達は言葉少なだった。野営する事になっても、飯時には陽気な会話が絶えないものだ。今日は違う。

どこかに逃げて隠れている事は無いだろうか。いや、逃げるなら集落の他の家に助けを求めるだろう。近隣住民から逃げる必要は無いのだ。いや、どうなのだろう……。

フヘドは暗い草原を眺めた。
人影が見えた。
ほんの僅かに草の海とその後ろの風景とを分けている燃え残りの明るさが、草波の向こうに人影を浮かび上がらせた気がした。
一人では無い。
錯覚だろうか。距離をおいて二つの人影が見える。
逃げた家族だろうか。
野営している場所のすぐ傍の朽ち掛けた廃屋の方で、小さな物音がしたような気がした。
ヘルツィフが剣の柄に手を掛けるのが見えた。
再び物音。
隊長が、煮込みの入った器を口元から放して、廃屋を見遣った。
それは微かな物音だった。不規則に、何かが擦れるような、軋むような。
風に吹かれた何かの動く音だろうか、夜走る小動物の立てる音だろうか。
しかし隊長の判断は早かった。
団員五名を廃屋に向わせたのだ。
顔触れは、いずれも場数を踏んだベテランばかりだったが、フヘドにはこの時の先輩達がやけに頼りなげに見えて仕方なかった。
辺りを警戒しながら、五人は廃屋に近寄って行った。

黒い影の様な家に、吸い込まれて行く様だった。

家に食われる者達の様にも見えた。


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posted by リューグハルト at 2006年03月10日03:30 | Comment(1) | TrackBack(0) | 外伝

屍鬼:2

トルゴイ自警団外周巡察部隊新入団員フヘド・エルールは、
興奮を隠し切れない面持ちだった。
自警団に入団して二ヶ月が過ぎようとしていたが、城外集落巡察は言ってみればのどかな遠乗りと何ら変わりの無いもので、が憧れる所の「勇敢」さを示す機会など微塵も有りはしなかった。それがフヘドには不満だったのだ。
だが今回の出動は違った。「事件」かもしれない。
死者が歩き回っていると言う。
その猟奇的な色彩はフヘドの少年めいた期待をいやましに膨らませた。

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馬に乗った隊長を先頭に、歩兵10人がトルゴイの城門を出たのは、遅い朝だった。
フヘドはこの城外の風景が好きだった。数年前まで友達と走り回って遊んだ風景だ。遠景に点々と見える寂しげな家々の輪郭が好きだった。そよぐ緑の草波が心地良かった。
自身は城内の生まれ育ちだったが、混み合った町よりも少し心細く閑散とした城外の風情を愛していた。
門を出て、馴染みの風景を眺めた時、出発前に感じていた高揚がわずかに冷めるのを感じた。それはどこか寂寞を感じさせる強い風の所為だったのか、鈍い暗灰色の空の所為だったのか。何かを遣り残したような、微妙にしくじった時のようなしこりが胸の奥に蟠っている気がした。
印象として言えば、城外集落―と言っても密集した集落の形態は取っていないが―には暗い緊張感が沈殿している様に思えた。
影が濃い。
季節は既に春になって暫く経つが、寒色の翳を そこここに感じる風景だった。
巡察隊は丹念な聞き込みをしながら、移動した。
得られる情報はどれも漠然としたものだった。
夜、見知らぬものが草原を歩いていた。離れた所に立ち尽くす人影を見た。深夜、外から壁を掻く音が絶えなかった。
そしてその子供染みたは町から離れるに連れて次第に団員達の胸の内に不安な塊として凝り始めた。
或る農家では、とうとう昨年病没した知り合いが半ば腐って歩いていたと言う話が出た。まがいの情報が目撃談と云う形に姿を変える薄気味の悪い感覚をフヘドは覚えた。

死者が、蘇る。
近辺で死者の蘇る場所と言えば、墓石の丘しかない。遠くなだらかに横たわる見慣れた丘陵が、フヘドの眼には既に忌むべき領域に見えている。
あの丘には昨年の秋、登った。
幼馴染の青年の葬式であった。それまでのフヘドに取って、はどこか遠い場所に在る陽炎のように不確かなものだった。が遠かったのは、それが老いに関係する物だと言う認識が有ったからだ。フヘドの参列した葬儀はことごとくが老人を送るものだった。年老いた先に在る筈のが、同年輩の友人の葬儀によって肌に触れるほどの距離で背後に立っているのを感じた。墓石の丘にその感覚を思い出させた。

自分を呼ぶ声に、はっと我に返る。これまでに参列した葬儀で見た、棺の中の様々な顔から、草原の風の中に意識が引き戻される。

一軒の城外集落の農家が眼の前に在った
集落の住民が数人、柵の外に立ち尽くしている。農家の屋根の上にが止まっている。カラスではなかった。しかしカラスに思えてならなかった。
隊長が馬から下りながら、部下に指図する声が聞こえている。

自分は、先輩二名と共に、その農家に入って行く事になっているようだ。
夢の中のように、視界が歪んでいる感覚がフヘドを襲う。何か凄く嫌な気分だ。これは何だろう、と自問していると農家が近付いて来る。
戸口だ。
先輩団員が、軋む戸を開けた。
もう一人の団員が、戸に身体を押し付けて開いたまま固定する。

先頭に立っている先輩はヘルツィフと言って、の使い手だった。城内の広場で行われる訓練で、その見事な剣捌きにいつも舌を巻いていた。
戸を押さえている先輩はホルスと言う名の大柄な男で、使いだった。やはりその強さで信頼されている腕利きだった。
ヘルツィフが細身のを抜いて、低く構えた。屋内に踏み込んだ。
ホルスフヘドを見遣って、顎で入れと促した。

黒い影の様な家の戸口が洞穴の様に見えた。黒々と口を開けた深い穴だ。
その屋内の暗さをフヘドは出来れば回避したかった。
ホルスが再び顎で促す。

いけない。
これ以上、臆した様子は見せられない。
自分は自警団の一員なのだ。
自警団は勇敢であらねばならない、とフヘドは自分に言い聞かせた。


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posted by リューグハルト at 2006年03月09日01:54 | Comment(1) | TrackBack(0) | 外伝

“光彩”のク・フーリン

RED STONEの場合、キャラを作る際にジョブを選ぶ訳ですが、
職業的には男性の方が多いんですね。
つい先日女性ジョブが増えましたが、それでも男性の方が多い。
次に実装される予定のジョブ男性ですし。

しかし思うに、各職業ごとに男女を選べるって形に、どうしてしなかったんでしょう。
だってで戦いたい場合も有ると思うんですがww
女の人だって天使武道家したい人も居るでしょうしww
訳の判らんジョブ増やすよりも、
全職業男女選択可能って奴を採用して貰えないものでしょうかww

さて、そういう訳で(・∀・)b

(リューグハルト)の担当するキャラ総勢四名
BIS剣士WIZ武道家です。

美那アチャテイマ2名で、半分でした。
実装されたらすぐにもう一人増やす心算だった訳ですが、それでも3人なんですね。
そこで実装を前に美那が作ったサブキャラが、
今回披露する「ク・フーリン」なのです(・∀・)b
まあ幸いな事にRED STONEは画面上での人物グラフィックが小さいので、
目鼻立ち等、細かい部分は認識出来ません。
と言う事は、シルエットさえそう違わなければ
男女は思い込み一つでどうとでもなる(・∀・)b

ク・フーリンマッチョ女天使なんですねヽ(*´A)ノ

cuchulainnss.jpg


現在レベル36
美那らしく攻撃色の強い( ゚∀゚)・∵天使に成長して行ってます(ノε`)ンププ
ホリサクマスター目指してるようです(´ノω`)コッソーリww

頑張れク・フーリンヽ(・∀・)ノ ワチョーイ♪

posted by リューグハルト at 2006年02月28日03:49 | Comment(5) | TrackBack(0) | 外伝

屍鬼:1

屍鬼とは、封印された生物である。

古には、地上を徘徊して居たとも言われるが、
現代に於いてその姿を目にする事は、まず以って無い。
伝説や昔語りの中の屍鬼は多分に物語中の怪物として粉飾され、
魔物の如く描かれて居るが、
げっ歯類の中で特に進化したものが地中での生活に適応した種族である。
彼らは地下に隧道を穿ち、広大な巣を形成し、原始的な社会生活を営んでいると思われる。
は殆ど退化し、地面を掘り進む為の前肢は逞しく、鋭く長いを有している。
体毛は硬くまばらで、後肢は貧弱だが二足歩行は可能である。
の仲間で有りながら、かれらはの様な体型に進化している。
恐ろしいのは一生伸び続ける強力な前歯であろう。

彼らが夕闇を過ぎて、地表をうろつく姿は古代の人々に恐怖を感じさせた。
また実際、土中を進み墓に行き当たれば、死体を食らう事も有ったであろう。
この死肉食と、歪な人型が、屍鬼を禍々しい生物であると人々に思わせたのだろう。
屍鬼は、駆除の対象となり、見掛けられれば殺害された。
数を減らし人目に触れる機会は激減した。
しかし、屍鬼には知能もあり、長年に渡る迫害は
人間に対する警戒と敵意を彼らに植え付けたと言って良い。

辺境の開拓村等が彼らに襲撃される事例も、少なからず記録されている。
彼らは夜闇に乗じ、集団で集落を襲い、食物を根こそぎ奪い尽くす。
当然ではあるが、この食物には人間も含まれる。
農作物家畜も、墓場の死体も、総て地中に引き込まれる。
彼らに襲われた集落には一粒の穀物も残されなかった。
彼らの印象はこうしてより陰惨なものに定着されて行ったのだ。

彼らを実際に目撃したと言う民は、大都市は無論の事、地方であっても皆無に等しいと言えた。
重要な街道からはやや外れた、小さな城塞都市であるトルゴイの市民達にとっても、
屍鬼を目にする機会が有るとは考えもしない事態であっただろう。
ましてやそれが大挙して城壁を取り囲む事になろうとは。

最初の兆しは、歩く死人を見た、と云う噂であった。
しかしこれは飽くまで噂話であって、誰も深刻な事件であるとは考えなかった。
所が被害が出た。死者に襲われると云う異常事態はしかし都市内での事では無かった。
元々トルゴイは城塞都市としては小振りで、
農民や新しく移って来た住民は城壁の外に暮らしていた。
トルゴイには山脈が走っており、その裾野の森は“暗い森”と呼ばれ、
いにしえの恐ろしい伝説の色彩に満ちたその領域は人々が近寄る場所では無かった。
森林が終わり、緩やかな丘陵が波打ち、やがて草原となってトルゴイに至る。
その丘陵は古くからの民人の墓所であった。
風になぶられて草が白く波立つ丘には点々と振り撒いた様に墓石が散らばっていた。
死者の歩くのを見た、と云う噂も、また時を置かず広まった死者に襲われた、と云う報告も
出どころは この丘陵を背負った草原地帯であった。
実際に被害者は存在していた。
自警団の団員達は、草原の外れの小規模な農民集落の中の一軒に立ち入って、
一様に顔を背けた。
明らかに何らかの生物に拠る、食い散らかされた死体、いや死体の残骸が散乱していたのだ。しかしこの時点では、襲撃者が徘徊する死者であると考える市民は居なかった。
数日を経ずして、自警団が複数の死体に襲われるまでは―――。

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posted by リューグハルト at 2006年02月07日02:04 | Comment(15) | TrackBack(0) | 外伝

緋玉徨記:目次

序章
第一部 封印 
   ├第一章
   | 「風のジグール」
   ├第二章
   | 「屍鬼:1」
   | 「屍鬼:2」
   | 「屍鬼:3」
   | 「屍鬼:4」
   ├第三章
   | 「夢の女:1」
   | 「夢の女:2」
   | 「夢の女:3」
   └ 執筆中
posted by 美那 at 2006年01月25日20:54 | 外伝

風のジグール

の生い立ちを知るものは少ない。

体技を磨き上げて、武器と化した身体が敵を砕き、
切り札として使う投げナイフは冷酷なまでに正確な軌跡を描いて敵の息の根を止める。
禁欲的な修行無しには、この技を身につける事は叶わなかったに相違無い。
は洞窟や遺跡に眠る財宝や金銀を得るべく放浪する職業的冒険者であった。

不心得な冒険者の行動で古いから大挙して屍鬼が溢れ、
取り囲まれて窮地に陥った小規模な城砦都市の様子を
は峠の大岩の上で興味無さそうに眺めていた。

は感情を押し殺す事に専心して来た。
愚かな人間の運命等には関わりたくなかった。
の遺跡探索は、の生命を繋ぐ為の仕事であって、の目的ではなかった。
は己を一個の武器に鍛え上げる事に静かな情熱を注いで居るようだった。
その道に益せぬ行為には力を割かれたくなかったのだ。

峠を下った宿場で、は不思議な光景に出会う。
僅かな隙間を縫って、屍鬼に包囲された町から脱出した少年が、
宿場を行く冒険者たちに助勢を呼びかけているのだ。
その城塞都市には、しかし冒険者の興味を惹く宝も金銀も存在しなかった。
ジグールの求道にも何ら関係が無かった。
少年の懇願に応える者の有る道理がない。

その男の声は、ジグールの内部に何事かの深い振動を呼び起こした。
思わずジグール声の主を視線で探した。
その大きな男は、僧兵の様にも、戦士のようにも見えた。
良く通る声が、少年に話しかけている。
城塞都市を救いに行こうと言っている。

ジグールの中に、言い知れない不安が湧き起こった。
自分の道に何か齟齬が有る様な気がしたのだ。
それは指先に刺さった微小な棘のような微かな痛覚だったが、
ジグールに取っては驚きを持って立ち尽くしたくなるような感覚であった。
それはあの大男が、少年を見詰める眼射しが、もたらしたものである事が
ジグールには判った。
に取って見過ごせなかったのは、己の指先の微小な棘が何なのか、判らずにおく事だった。
あの男について行けば、それが判るような気が、
根拠もなくふっとジグールの胸に漣を立てた。

大男の広い背中に、声を掛けていた。
声を掛けた自分に幾分心地良い驚きを感じた。
「一緒に行こう。」
大男が振り返る。
「足手纏いにはならんよ。」
大男が微笑んだ。
「俺はジグール。いつ立つ?」
「今からだ。」と、大男が答えた。
少年の顔が輝いた。
「心強い申し出に感謝する。俺はリューグハルトだ。」

運命が二人を出逢わせた。

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posted by リューグハルト at 2006年01月24日05:21 | Comment(6) | TrackBack(0) | 外伝

「剣光八閃」

さてさてw

美那おねだりされて
「緋玉徨記:FRAIL&GRAIVE」なんて物を立ち上げちゃいましたがww
どういう形で展開して行くか、思案中であります。(ノε`)ンププ

物語の詳細は大掴みな状態ですが、主人公に絡む主要キャラクターは考えてみました。
赤石世界で存在する職業を網羅する形ですw
美那リューグハルトをこつこつレベルアップしつつ、こっそり育てていましたww

取り敢えず紹介出来るのは次の四人です。
ご紹介しましょう―――

fantastic4.jpg


左から“風”のジグール
“霹靂”のロスタム
“滴”のアヤラル
“一角獣”エヴェルの面々です。

実際はこの4人と美那・リューグハルト組パーティを組む事は出来ませんが、
物語上はパーティを組んで活躍する事になると思います(多分;
彼ら一党が、後にブルンネンシュティグ「剣光八閃」と呼ばれる事になります。

最初に記念SSを撮った時から記事にするのに時間が経ってしまって、
レベル等ギャップが出てしまったので、
改めて最近の姿を撮りました。
ついでに幻のパーティSSを作ってみましたw

fantastic4thumb.jpg
■ 画像クリックで拡大表示されます ■

実はあと二人待機中です(´ノω`)コッソーリ
まあ「八閃」ですからね(ノε`)ンププ
その正体は?|∀・) ・・・

お楽しみに!!ヽ(A`*)ノ
posted by リューグハルト at 2006年01月18日18:23 | Comment(18) | TrackBack(0) | 外伝

「緋玉徨記」 FRAIL&GRAIVE

序章:

後世“守護のリューグハルト”と呼ばれるに至る、
元来はビショップに向かぬ激しやすい戦士は、東の辺境に生を受けたという。
持ち前の腕力で、辺境を跋扈する魔物害獣を退治して
地方の勇者と目されるようになったは、或る日不思議な夢を見る。
それはと云うにはあまりにも生々しい情景であった。
そのの中では一人のに出逢い、に落ちたのだと言う。
の中でリューグハルトとそのは邂逅し逢瀬を重ね、やがて意思を伝え合い想い合った。
そのの名は美那と云った。

後に“強襲の美那”と異名を取る美那は、西の辺境の、
その環境としては繁華な宿場町に生まれた。
家族の中に家を守る男がおらず、自然と女戦士としての素質を磨く事になる。
戦いに臨む少女は、その果敢さで周囲を感嘆せしめる成長を見せた。
その闘いの日々の中、彼女もまた鮮明な夢の中で一人の戦士に出逢う。
その日から彼女は、に出る事のみを考えるようになり、
後事を町の警護団の同僚達に託して生まれ故郷を後にする。
想いはただ、ブルンネンシュティグに在った。

リューグハルトは周囲の反対に耳を貸さず
決然と戦士になる事を思い止まり、ビショップを志す。
西の辺境で奔放に育った女戦士の補助にまわる為であった。
このリューグハルトの転身を周囲の者は訝しみ冷笑したが、の決意は固かった。
回復魔法を覚えたと思う間も無く彼は古都ブルンネンシュティグに旅立つ。

ビショップとしてはまだ駆け出しであったは、
諸国からの勇者冒険者の群れるの一角で、
惹かれ合うように西の辺境から旅をして来た美那と出逢った。

夢は現実であった。

後の世に編纂され「緋玉徨記」と題される事になる、
夢の導きに拠って結ばれた美那リューグハルト運命記録
この時より始まったのだ―――。

ruegmina4b.jpg

■ 画像をクリックすると拡大表示されます ■



posted by リューグハルト at 2006年01月08日00:51 | Comment(23) | TrackBack(0) | 外伝